褥瘡のステージ分類のNPIAP(NPUAP)分類とは?ステージごとの判定方法を徹底解説
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褥瘡(床ずれ)の評価を行う時「この褥瘡のステージ分類はあっているのだろうか?」と悩んだ経験はありませんか?
褥瘡の重症度を正しく判定することは、適切な褥瘡ケアや治療につながる重要なポイントとなります。
本記事では、創部の深さや組織の損傷程度を評価する国際的な重症度分類として広く活用されているNPIAP(エヌピーアイエーピー分類)分類の概要や各ステージの判定基準、評価時の注意点に加え、日本で広く用いられているDESIGN-R®との違いについてもわかりやすく解説していきます。
褥瘡の重症度分類
褥瘡の重症度分類とは、褥瘡(床ずれ)の進行度や組織損傷の深さを評価する分類です。正しく評価し適切な治療やケアにつなげることが大切です。
褥瘡は、長時間の圧迫やズレによって皮膚や皮下組織の血流が低下し、組織が障害されることで発生します。一見軽度の発赤に見えても、深部組織まで損傷している場合もあり、外見だけでは重症度を判断できないケースも少なくありません。そのため、創部の状態を客観的に評価し、適切な処置やドレッシング材(創傷被覆材)の選択、感染対策、体位変換などの褥瘡予防を行うことが重要となります。
褥瘡の評価には、次のような分類・スケールがあります。
・NPIAP/EPUAP分類・・・褥瘡を深さごとに分類する国際的基準
・DESIGN-R®・・・日本褥瘡学会が開発した褥瘡の重症度や治療経過を評価するスケール
・PUSH Scale・・・創面の変化から治療の進行状況を評価するスケール
・Braden Scale・・・褥瘡ができるリスクを評価するスケール
NPIAP/EPUAP分類とは?
NPIAP/EPUAP(エヌピーアイエーピー/イーピーユーエーピー)分類とは褥瘡(床ずれ)の深達度(損傷の深さ)によって重症度を分類する国際的な共通評価基準です。
褥瘡の深さや組織損傷の程度を「ステージ1~4」「深部組織損傷」「判定不能」の6つに分類します。
NPUAPは2016年に「Pressure Injury(プレッシャーインジュリー)」という概念を採用し、2019年には団体名をNational Pressure Injury Advisory Panel(NPIAP:エヌピーアイエーピー)へ変更しています。
現在の国際的なガイドラインでは、「Pressure Injury(圧迫による組織損傷)」という表現が主流となっていますが、日本の臨床現場では「褥瘡」や「NPUAP分類」という名称も広く使用されています。
NPIAP分類とDESIGN-R®の違いは?
NPIAP分類は褥瘡の「深さ」を評価する方法、DESIGN-R®では褥瘡の「状態や経過」を評価する方法です。
臨床現場では、NPIAP分類でステージを判定し、DESIGN-R®で状態や経過を評価するよう、両方を組み合わせて活用することが一般的です。
例えば、仙骨部に褥瘡がある場合、NPIAP分類では「ステージ2」「ステージ3」など創の深さを評価します。一方、DESIGN-R®では、創の大きさ、深さ、浸出液、炎症や感染、肉芽組織、壊死組織、ポケットなど褥瘡の状態を点数化して評価します。このように、NPIAP分類は「現在どの程度の組織損傷があるのか」を判断する指標、DESIGN-R®は「治癒に向かって改善しているのか、悪化しているのか」を確認する指標として使い分けることが可能となります。
NPIAP分類のステージと判定方法
カテゴリ/ステージ1:消退しない発赤
ステージ1は皮膚に発赤(消えない赤み)が見られる状態です。
判定ポイント
・皮膚の欠損なし
・赤みが押しても消えない
・熱感や硬さ、痛みを伴うことがある
・色の濃い皮膚では発赤がわかりにくいことがある
ケアのポイント
・体位変換や体圧分散マットレスを用いた除圧
・皮膚を清潔・乾燥に保つ
カテゴリ/ステージ2:部分欠損
ステージ2は表皮から真皮まで損傷した浅い褥瘡です。
皮下組織や脂肪組織は露出しておらず、比較的浅い創傷であることが特徴で、皮膚の一部が失われ浅い潰瘍やびらんや水疱がみられますが、壊死組織やスラフ(黄色壊死組織)は基本的にみられません。
創部の状態に合わせてドレッシング材を選択し、感染予防を行うことが大切です。また、継続して体圧管理や栄養状態の改善も欠かせません。
判定ポイント
・真皮が露出した部分層皮膚欠損
・水疱やびらんがみられる
・ピンク色や赤色の創面
・壊死組織やスラフ(黄色壊死組織)は基本的に認めない
※皮膚剥離や失禁関連皮膚炎などは、褥瘡と区別して評価する必要あり。
ケアのポイント
・創面の保護
・適度な湿潤環境の維持
カテゴリ/ステージ3:全層皮膚欠損
ステージ3は皮下組織まで達した褥瘡です。
皮下脂肪の厚さは部位によって異なり、鼻や耳などの皮下脂肪が少ない部位では創面が浅く見えてもステージ3となることがあり注意が必要です。
浸出液が多い場合は適切なドレッシング材を選択し感染の予防を行い、壊死組織がある場合は医師の判断のもとデブリードマン(壊死組織の除去)を検討します。
判定ポイント
・皮下組織が露出している
・筋肉・骨・腱は露出していない
・肉芽組織やスラフ(黄色壊死組織)を認めることあり
・ポケットを形成していることがある
ケアのポイント
・感染の有無の確認
カテゴリ/ステージ4:全層組織欠損
ステージ4は筋肉や腱、靱帯、軟骨、骨などの深部組織まで損傷が及んだ最も重度の褥瘡です。
創部の状態に合わせてドレッシング材や外用薬を選択し、必要に応じてデブリードマン(壊死組織の除去)を行うこともあります。また、感染管理や栄養管理や体位変換による除圧など多職種で継続的な褥瘡ケアを行うことが重要です。
判定ポイント
・筋肉・腱・靱帯・軟骨・骨などが露出している
・肉芽組織や壊死組織(スラフ・エスカー)がみられることがある
・ポケット(創部の奥に空洞)が形成されている場合がある
ケアのポイント
・医師による適切な治療が必要です。
・滲出液が多く、感染(骨髄炎など)を合併しやすい
深部組織損傷(DTPI:旧DTI)
深部組織損傷(DTPI : ディーティーピーアイ: Deep Tissue Pressure Injury)は、皮膚表面は保たれていても、深部組織が損傷している状態です。
DTPIは、以前はDTI(Deep Tissue Injury)と呼ばれていましたが、2016年にNPIAPが「Pressure Ulcer(褥瘡)」から「Pressure Injury(圧迫による組織損傷)」へ名称を変更したことに伴い、DTIもDTPI(Deep Tissue Pressure Injury)へ名称が変更されています。
見た目では皮膚損傷が少ない場合でも、深部では組織障害が進行していることがあります。そのため、短期間でステージ3やステージ4へ進行する場合もあり、早期発見と継続的な観察が必要です。
判定ポイント
・皮膚に紫色や暗赤色の変色
・血液がたまったような水疱が見られることがある
・皮膚は破れていない場合が多い
・痛みや熱感、硬さを伴うことがある
・見た目以上に深部組織が損傷している場合がある
ケアのポイント
・深部組織損傷(DTPI)が認められた場合、まず圧迫を取り除き継続して観察を行う
判定不能
判定不能とは、壊死組織やスラフで創部が覆われており褥瘡の深さを判断できない状態です。創面が見えないため、見た目だけでステージ3や4と判断することは困難です。
踵にみられる乾燥して安定した壊死組織(エスカー)は、感染や炎症がない場合、無理に除去しないことが推奨されています。
判定ポイント
・創面が壊死組織(エスカー)やスラフ(黄色壊死組織)で覆われている
・創部の底部が確認困難
・深さの評価困難
ケアのポイント
・必要に応じてデブリードマンを行い創面を確認
※デブリードマンの適応は医師が判断するため、自己判断で壊死組織を除去することは避けましょう。
正しく判定するためのポイント
褥瘡を正しく判定するには創部だけでなく全身状態を評価することが重要であり、「見た目だけ」で判断しないことも重要です。
例えば、表面の皮膚が残っていても内部で組織損傷が進行している深部組織損傷(DTPI)の場合があります。また、壊死組織によって創底が確認できない場合には無理に深さを判断せず「判定不能」と評価を行います。誤ったステージ判定は、治療方法やケア方法の選択に影響するため、褥瘡の特徴を理解したうえで評価することが重要となります。
判定時には、次の点を確認します。
・創部の深さや大きさ
・発赤や皮膚の色調変化
・滲出液の量や性状
・壊死組織やスラフ(黄色壊死組織)の有無
・ポケットの有無
・熱感や腫脹、悪臭など感染を疑う所見
・圧迫を受けやすい部位(仙骨部、踵など)
・栄養状態や活動量、基礎疾患
また褥瘡は日々状態が変化するため、判定は一度だけでなく継続的な観察と評価が大切です。
まとめ
NPIAP分類は、褥瘡(床ずれ)の深さや組織の損傷程度を評価する国際的な重症度分類です。ステージ1〜4に加えて、深部組織損傷(DTPI)や判定不能を正しく理解することで適切な褥瘡ケアや治療に繋がると考えられます。また、褥瘡の状態や治癒経過を評価するDESIGN-R®と併用することで、より適切なアセスメントや経過観察が可能となります。
褥瘡を適切に評価するためには、創部の状態だけでなく全身状態や栄養状態、感染の有無などを総合的に見極めることが大切です。日頃から継続的な評価や観察を行い、他職種で連携を行いながら適切な褥瘡予防と治療に繋げていきましょう。
参考文献
・一般社団法人 日本褥瘡学会 編.『褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版』.照林社,2022.
・一般社団法人 日本褥瘡学会 編.『改定 DESIGN-R®2020 コンセンサス・ドキュメント―褥瘡状態評価スケール』.照林社,2020.
・National Pressure Injury Advisory Panel (NPIAP), European Pressure Ulcer Advisory Panel (EPUAP), Pan Pacific Pressure Injury Alliance (PPPIA). Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline.
・National Pressure Injury Advisory Panel (NPIAP). Pressure Injury Staging System.
参考サイト
・一般社団法人 日本褥瘡学会(JSPU)
・褥瘡評価ツール DESIGN-R®2020(日本褥瘡学会)
・National Pressure Injury Advisory Panel(NPIAP)
・European Pressure Ulcer Advisory Panel(EPUAP)
・International Guideline(Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries)