褥瘡の治療で使用する薬について|種類と特徴、使い分けのポイントについて|一般社団法人日本終末期ケア協会

褥瘡の治療で使用する薬について|種類と特徴、使い分けのポイントについて

2026.8.24 JTCAゼミ

目次

褥瘡(床ずれ)の治療では様々な薬剤が使われますが、「今使っている薬はこの患者さんにあっているだろうか」と不安に思ったことはありませんか?

褥瘡治療では、傷の深さや壊死組織の有無、滲出液(浸出液)の量、感染の有無、全身状態を見極めて、外用薬やドレッシング材を使い分ける必要があります。

本記事では、褥瘡治療で用いられる主な薬剤の特徴や、使い分けのポイントを解説します。
実際の使用は、必ず医師の指示にしたがって行ってください。

褥瘡の治癒過程

褥瘡の治癒過程は、4段階(黒色期→黄色期→赤色期→白色期)に分類されます。

浅い(真皮にとどまる)褥瘡では、創保護と適切な湿潤環境を維持すること、圧迫などの発生原因を除去することで新たに皮膚が再生し治癒します。

一方で深い褥瘡の場合、4つの段階(黒色期、黄色期、赤色期、白色期)を経て進んでいきます。

黒色期は、血流不足などにより傷ついた皮膚や皮下組織が壊死し、黒く硬い組織になった段階です。必要に応じて壊死組織を取り除くデブリードマンを検討します。

黄色期は、壊死した脂肪組織や膿などにより創面が黄色く見える状態です。浸出液が多く、感染や臭いが伴う場合があります。

赤色期は、壊死組織がなくなり、新しい肉芽組織が形成される段階です。この段階では、肉芽組織を傷つけないように創面の乾燥を防ぎつつ、適切な湿潤環境を保ち、肉芽形成・上皮化を促していく必要があります。

白色期は、肉芽組織の周囲から新しい表皮ができ、上皮化が進んで創面が小さくなっていく段階です。新しい皮膚は薄いため、摩擦やずれを起こさず、乾燥を防ぐケアが必要です。

褥瘡治療薬の種類と使い分けのポイント

褥瘡治療には主に、「ドレッシング材」と「塗り薬(外用薬)」が用いられます。

DESIGN-R®2020とは、褥瘡の状態を評価する指標です。傷の深さや滲出液の量、傷の大きさ、炎症・感染の有無、肉芽形成や上皮化の状態、壊死組織の有無、ポケットの状態を評価し、その結果に応じてドレッシング材や塗り薬(外用薬)を選択します。

ドレッシング材

ドレッシング材とは、「創における湿潤環境形成を目的とした近代的な創傷被覆材をいい、従来のガーゼは除く」と日本褥瘡学会にて定義されています。創面を外部刺激や汚染から保護し、創部の適切な湿潤環境を保つことで創の治癒を促します。

ドレッシング材の種類や特徴と選び方については、こちらのブログ『褥瘡のドレッシング材とは?種類と特徴、看護における観察ポイントを解説』をご覧ください。

塗り薬(外用薬)

単に褥瘡に対する塗り薬(外用薬)といってもその効能は薬剤の種類によって様々で、抗炎症作用や感染抑制、壊死組織の浸軟、肉芽形成・上皮化の促進などの作用があります。

また、薬効だけでなく基剤の特性も考慮し、創面の状態の変化に合わせて薬剤を切り替えていくことが重要です。

塗り薬の基剤の種類と特徴

基剤の特性として、「油脂性」「水溶性」「乳剤性」と分けられます。それぞれ特徴や適応が異なり、創部の状態に応じて使い分けます。

基剤の種類 主な特徴 適している褥瘡の状態
油脂性基剤 油分で創面を保護し、乾燥や外部刺激を防ぐ 発赤や紫斑、水泡など、滲出液の少ない比較的急性期の褥瘡やほぼ治癒している創部
乳剤性基剤(W/O型) 油の中に水分を含んでいる。油分が多く、創面保護や保湿作用がある 乾燥傾向の滲出液の少ない褥瘡
乳剤性基剤(O/W型) 水の中に油を含んでいる。水分を多く含み、乾燥した創面に補水効果がある 滲出液の少ない乾燥した褥瘡
水溶性基剤 滲出液の吸収性に優れる 滲出液の多い褥瘡・壊死組織のある褥瘡

主な塗り薬の種類と特徴

褥瘡に使用される塗り薬にはさまざまな種類があり、それぞれ作用や適応が異なります。
創部の状態や治癒過程に応じて適切な薬剤を選択することが重要です。

代表的な塗り薬の特徴を以下に示します。

薬剤名 主な作用 使用時期 ポイント
アズノール軟膏 消炎・創面保護/保湿 急性期~上皮化期 滲出液が多いものには不向き
プロスタンディン軟膏 血流改善・肉芽形成促進・上皮化促進 赤色期~白色期 重篤な心不全や出血のあるものには禁忌
感染創には単独使用しない
ゲーベンクリーム 殺菌・細菌増殖抑制 黒色期~黄色期 長期使用は肉芽形成の抑制につながる
カデックス軟膏 ヨウ素による殺菌・吸水 黒色期~黄色期 ヨウ素が含まれるため甲状腺疾患や腎疾患のある者には注意して使用
肉芽形成が進んだらほかの薬剤に切り替え
ユーパスタ軟膏 白糖による肉芽形成促進・殺菌 黄色期~赤色期 感染が落ち着き滲出液が減少したら他薬剤へ変更
アクトシン軟膏 血流改善・血管新生促進・肉芽形成促進・上皮化促進 赤色期~白色期 感染の落ち着いた浸出液の多いものに使用

ここからは、それぞれの塗り薬の特徴や使用時のポイントについて詳しく解説します。

アズノール軟膏

アズノール軟膏は油脂性基剤で抗炎症作用と保湿作用があり、発赤や紫斑などが見られる初期の褥瘡に対して塗布し傷口を保護・保湿し、治癒を促すために使用することが多いです。
また、重度の褥瘡に対して強い薬剤を使用する際に、正常の皮膚を保護する目的で使用することもあります。

プロスタンディン軟膏

プロスタンディン軟膏は油脂性基剤で、血流増加作用や血管新生作用、肉芽組織・表皮形成促進作用があります。そのことから、赤色期から白色期の褥瘡治療に用いられます。

一方で、重篤な心不全を有するものや出血傾向のあるものへの使用は禁忌となっています。

ゲーベンクリーム

ゲーベンクリームは水中油型の基剤で、滲出液が多い場合には滲出液をある程度吸収しながらも剤形を保ち、滲出液が少ない場合には創部の保湿をして湿潤環境を保ちます。主成分は銀であり、殺菌作用や細菌増殖抑制作用があります。
また、黒色期の褥瘡では硬い壊死組織を浸軟させる効果もあります。

カデックス軟膏

カデックス軟膏は、水溶性基剤で滲出液を吸収し創面の清浄化作用があります。また、ヨウ素の殺菌作用で潰瘍の治癒を促します。感染を伴う滲出液の多い黒色期から黄色期の褥瘡に適しています。

一方で、ヨウ素が含まれるため、甲状腺疾患や腎疾患のあるものへの使用、大量使用や長期使用には注意が必要です。

ユーパスタ軟膏

ユーパスタ軟膏は、水溶性基剤で創部の滲出液を吸収する作用があります。殺菌作用と創傷治癒作用があります。成分の一つである白糖は肉芽新生および表皮再生促進効果があり、カデックス軟膏で感染が落ち着き、滲出液が減少してきたらユーパスタ軟膏に切り替えるといった使い分けが可能です。

また、カデックス軟膏と同様にヨウ素が含まれるため、甲状腺疾患や腎疾患のあるものへの使用、大量使用や長期使用には注意が必要です。

アクトシン軟膏

アクトシン軟膏は、水溶性基剤で吸水効果を要するため、感染や壊死組織の落ち着いた滲出液の多い赤色期から白色期にかけての褥瘡に用います。

局所血流改善作用、血管新生促進作用、肉芽形成促進作用、表皮形成促進作用があり、創傷治癒を促進します。

まとめ

褥瘡の治療薬は、薬効だけで選択せず褥瘡の状態や治癒過程に合わせて選ぶことが重要です。感染や壊死組織、滲出液がある時期にはその管理を優先し、肉芽形成や上皮化が進む段階では、治癒を促す薬剤やドレッシング材を選択します。

また、薬だけに頼らず、日々の除圧や体位変換、栄養管理なども徹底することが大切です。

参考:

1)日本終末期ケア協会監修.終末期ケア専門士公式テキスト 第2版.アステッキホールディングス.2023.

2)創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン策定委員会(褥瘡グループ).創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン(2023)―2 褥瘡診療ガイドライン(第3版).日本皮膚科学会雑誌.2023;133(12):2735-2797.

3)DearCare.最新ガイドライン・DESIGN-R®2020に基づく新まるわかり褥瘡ケア.ALMEDIA..最終アクセス日:2026年7月27日.

4)花房崇明.【ゲーベンクリーム(スルファジアジン銀)】とは|【医師監修】皮膚科専門医が解説|効果・使い方・注意点・料金.花房火月クリニック..最終アクセス日:2026年7月27日.

5)CareNet.ユーパスタコーワ軟膏.CareNet 医療用医薬品情報..最終アクセス日:2026年7月27日.

6)興和株式会社.カデックス軟膏0.9% 添付文書.JAPIC 医療用医薬品添付文書情報..最終アクセス日:2026年7月27日.